B-Side Wins Again 5-4 文化的武器としてのラップ

minority-net から一部抜粋

第4節 文化的武器としてのラップ

これまでのアメリカの黒人音楽の変遷の歴史からすれば、あるスタイルの黒人音楽がアメリカ社会全般でポピュラリティを得ると、そのスタイルが盗用されて白 人が中心のアメリカ主流文化向けにあたり障りのない程度に薄められ、その音楽が生み出す利益も白人中心の主流マーケットを牛耳るメジャーレコード会社に独 占されて、黒人社会からは離されて手出しできなくなってしまってきた。  しかし、ラップ・ミュージックは主流文化へクロスオーバーし、その白人の間でのポピュラリティや、白人のラッパーやラップグループなどフォロワーが存在 し、なおかつ主なヒップホップレーベルが大企業メジャーレコード会社と提携契約してその利益の分け前をシェアしているのにも関わらず、黒人社会と密接な関 係を保ってきた。

その理由として、ヒップホップ・カルチャーの価値観が、自力本願の、自己充足的な考え方に基づくものであるということが考えられる。 人種統合という理想を追求した同化思想によって、軽んじられ、弱体化していた黒人文化の伝統を生き返らせたその新しい価値観は、白人中心の主流文化の社会 とは地理的にも、物質的にもかけ離れたゲットーという限定された環境において生まれたものであるが故に、アメリカ主流文化の価値観とは違った、黒人達の持 つ民族独自の文化的価値観を肯定するものであり、ゲットーに住む人々に自尊心を与えうるものとなることができたのである。

過去のアメリカの黒人の歴史において、黒人が同化思想に固執し続けた理由には、主流文化における人種差別的な黒人観の影響から黒人達自 身が自ら自己不信に陥り、その劣等意識から黒人文化を肯定しきれずにいたということがある。アメリカの社会には、過去の奴隷制を正当化する為に考え出 された差別的人種観、白人は人種として優れているが故に劣等人種である黒人を奴隷にできる、と言う考え方が現代にも根強く残っている。 あまりにも根強く残っているので、社会的に人種の平等が保証された現在ではそれがあからさまにおもてに出ることがないだけに、黒人も白人も無意識のうちに 洗脳されてしまってその影響下にあるのに気がつかないのである。『マルコムX自伝』において、マルコムがアフリカに旅行した時にある白人のアメリカ大使と の会話でこのことに気づいたと言うくだりがある。

『….私はいった。「つまり、人種差別主義者であるのはアメリカ白人という人間そのものではなく、白 人のなかに自動的に差別心理を育てているのはアメリカの政治的、経済的、社会的な雰囲気だということですね。」彼はそのとうりだといった。私たちはまた、 アメリカ社会は、アメリカでの人間同士の出会いと皮膚の色の違いに無関心になることを、ほぼ不可能にしているという点で意見が一致した。さらに私たちは、 人種差別が撤廃できるなら、アメリカは富めるものも貧しい者も、ともに本当に人間らしい暮らしのできる国になるだろうに、という点でも一致した。 大使とのこの会談のせいで、私には新しく見えてきたことがひとつあった。―それは自分でも気に入っている。すなわち、白人は生まれつき邪悪なのではなく、 アメリカの人種差別社会が邪悪な行動を引き起こすように影響を与えているのだ。社会こそが人間の最低、最悪の部分を引き出す心理を生み育てているというこ とである。』
(マルコムX/アレックス・ヘイリー著  『完訳マルコムX自伝(下)』2002年 中公文庫)

続きはminority-netで。

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